車いすユーザーが本音で語る階段避難や災害時移動にあって欲しい避難器具

車椅子と災害時の避難 暮らし・生活
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皆さんは、災害時要援護者という言葉を知っていますか?

車いす生活をしている障がい者、高齢者、幼い子供 妊婦さんなど地震や豪雨災害時に速やかに避難することが困難な方のことを「災害時要援護者(さいがいじようえんごしゃ)」といいます。

例えば、ひとり暮らしのマンション住まいで車いす生活をしている私も現在は災害時要援護者とされています。

こちらでは車椅子(車いす)ユーザーの視点と、東日本大震災時には避難を手伝っていた側の経験を踏まえて「車椅子での避難」時に介助する側、介助される側の双方が負担軽減するために「これは役立つ!」と思った避難器具をご紹介します。

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車椅子(車いす)ユーザーの避難と災害

東日本大震災以降、熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振東部地震と8年間に3度も大きな地震が発生。

台風・豪雨災害では大震災翌年の平成24年7月九州北部豪雨以降、広島での土砂災害、鬼怒川の決壊、記憶に新しいところでは昨年発生した倉敷市真備町が浸水被害にあった平成30年7月豪雨や関西国際空港が孤立した台風21号。

自宅のガラス戸が!
私自身も昨年の台風24号の際は自宅ベランダ側の網入りガラス戸が飛来物で大きくヒビが入ってしまい管理会社さんに連絡して1週間後くらいに保険で修理してもらいました。

また、今年春ごろには電力会社の送電設備から発火したとかで近隣一帯で4時間ぐらいの停電を体験しています。

30年以内に南海トラフ地震
さらに近年では今後30年以内に発生する確率70~80%と言われ、大津波をともなう巨大地震「南海トラフ地震」が心配されていますね。

駿河湾から四国沖の広い範囲で短期間に連動して地震が発生する可能性もあり、30cm以上の津波が30分以内に到達すると予想されている沿岸部の住民は1週間ほど避難すべきだとされています。

車椅子の生活になってからの緊急地震速報

「〇〇〇で地震発生 強い揺れに備えて下さい(気象庁)」というJアラート・緊急地震速報を3回ほど受け取っています。

その度に身構えて怖いなって思いながら「この身体だ、仕方ない、覚悟しよう」と思うのです。

絶妙なタイミングで緊急地震速報 
緊急地震速報
6月17日8時ごろ関東から東北地方の広い範囲で揺れた地震の緊急地震速報(yahoo防災アプリから)「およそ〇秒後・・・最大震度〇」と届きました。

リアルにいまの心の動きを客観的に言えば、予想される震度が低かったの心穏やかです。

でも、これが契約しているキャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)から震度5弱以上の地震が発生したときに強い揺れ(震度4以上)が予測される地域に一斉送信される「エリアメール」の受信音がiphoneから響いていたら心拍が上がっていたと思います。

この記事を前日か記事を書いているので意識してしまっているのですが、普段なら速報から30分ぐらいは警戒、その後、安堵感とともに「車いすで避難するには」「生き抜くには」と申し訳なくも考えるというのが本音です。

この何とも言い難い気持ちを車椅子ユーザーさんが読まれていれば、共感していただけるのではないかと思います。

そんな私ですが、で8年前の東日本大震災では避難を手伝う側にいました。

東日本大震災では車椅子での避難をサポート

8年前の大震災の時は、会社の後輩と出張先の仙台にいました。

あのとき、私たちの周囲には車椅子の女子高生と杖を持った高齢者、小さなお子さんを抱えている妊婦さんというドラマみたいな状況。

エレベーターは止まり、どう考えても車椅子の女子高生は自力で逃げることはできないだろうし、祖母と同じくらいの高齢者、姪っ子と変わらないくらいの幼い子を置き去りにして逃げられないと思いました。

若い自分たちが避難を手伝うしかないと後輩と話して声をかけその場にいた全員で避難。

背負って地上まで降りたら津波!?
女子高生を背負って非常階段で4階から地上まで降りました。
すると、どこからともなく「津波が来るようだ、もっと高いところに逃げろ!」との声。

実際には誤報で津波の被害はありませんでしたが、その時は半信半疑ながらもヤバイ!と思って全力で車椅子を押して周囲の方と逃げますが、高齢の女性の歩調が遅いのです。

とっさに女子高生を再び背負い、高齢女性には車いすに乗ってもらい走ってさらに高いビルに向かいました。

でも、車椅子の操作に詳しくなかった当時は何度も小さな段差で前輪タイヤがぶつかるし、坂道を押し上げるのは体力も必要で避難に時間がかかりました。

もしも、本当に津波が到達していたら間に合ったか自信が無いですね。

そんな災害時の救援救護?したときに感じたことは、車いす生活になってから実感したことと共通する点もありました。

車椅子ユーザ― 避難時の4つの課題

  • 停電でエレベーターが動かないときの階段
  • 段差の多い場所での移動
  • 電動車いすの重さ
  • その場に1人だったら

この4つが最大の課題です。

もしも、その場に助ける立場でも助けてもらう立場でも1人だったら。
あのとき、周囲に人がいたのでエレベーターが止まっていても私が本人をおぶって後輩が後ろを支え、居合わせた1人の男性が車椅子を折りたたんで運べました。

「電動車いす」だったら
手動の自走・介助式の車椅子だってので簡単に持てました。

しかし、電動車いすだったと仮定したら負担が大きく、余震が起きたらバランスを保てず自分たちも危険なので「安全なところへの避難」を優先、諦めてもらうしか選択肢はなかったと思う。

また、歩くスピードの遅い高齢者は支えて歩くよりも車椅子を利用してもらう方が2倍以上早く避難できることも実感。

以上を踏まえて「これは役立つ!」と思った避難器具3つをご案内します。

階段避難やスピーディーな移動を実現する避難器具

階段避難車「キャリダン CD-8」

国会議事堂本会議場入口横、アメリカ国防省(ペンタゴン)にも導入されている「キャリダン」は移動可能な階段避難用の装置です。

介助者:2名
(キャリダン操作1名・車椅子を運ぶ1名)

駅などに設置されている固定式のリフト昇降機と違って導入コストが抑えられる利点があり、私の住むマンションの管理組合でも来年度中の導入に向けて予算編成中です。

介助する側の負担軽減
車椅子を持ち上げずに本人を「キャリダン」に移乗させて車椅子を押すような要領で避難させることができるので負担が少ないです。

特殊な車輪とゴムクローラーが階段をしっかりとらえ、ハンドルレバーから手を放せば階段上でもブレーキのかかる設計なので安全への配慮という点も軽減。

介助される側は安定感に安心
複数人で持ち上げられたときの高さのアンバランス感が無いので車いすユーザー本人も安心。
速度も一般の人が階段を降りて避難するスピードとほぼ同じに設定されている点も恐怖感が軽減できます。

耐荷重は180kgなので大柄な男性でも心配ありません。

サイズ
使用時:全長1,303mm×全幅425mm×全高820mm
収納時:全長1,106mm×全幅425mm×全高270mm

利用時に必要な稼働スペース
車椅子の階段避難器具(非常用階段避難車 キャリダン-CD-8 稼働スペース)
階段傾斜角度:40度以下
階段幅:90cm
踊り場:1m5cm×1m80cm

国会議事堂に設備されている時点で品質の安全性は理解できますが、一般財団法人日本消防設備安全センター(消防防災分野で有効に活用できると認められた商品などの情報提供を行う機関)からも「消防防災製品等推奨品」として指定されています。

ちなみに開発したメーカーは埼玉県狭山市に本社置く「株式会社サンワ」1935年に農業用運搬車の製造企業として創業。

約40年前の1979年にはバッテリー式車いす用階段昇降車「ステアエイド」を製造するなど、車椅子の階段昇降に関しては長い歴史を持っています。

キャリダンは下り専用ですが、上り用のステア・チェアも販売しています。

車いすごと避難したい場合

介助者:1名

車いすごと運べる「ステアエイド SA-3-1」もあります。

こちらは個人ではなく高齢者や車いす利用者の多い集合住宅や商業施設、障がい者・高齢者施設などが災害時の避難のために配備しておくレベルのものです。

車いすから移乗できるなら「キャリダン CD-8」の方が介助される側の恐怖心も少ないと思います。

と言いながら、身体的な負担を考えると慣れている車いすごとリフトに乗り込んで降りられたら心強くもあります。

重量級の電動車いすの場合
電動車いすごと運べる「ステアエックス TRE-70-1」最大許容荷重:230kgという商品もありますが、現実論では個人で購入するには高すぎます。公共施設などある程度の予算を組めるところでは今後の超高齢化を考慮して配備しても良いと思います。

取扱店:総合福祉アビリティーズ楽天市場店

非常用階段避難車 キャリダン CD-8

階段昇降車 ステアエイド SA-3-1

取扱店は複数ありますが、管理組合で相談したことのある福祉用具などの販売・レンタル業者「アビリティーズ・ケアネット(株)」さんの楽天市場店をご案内しています。

座ったまま運べる担架「ベルカ kb-90/kb-160」


介助者:1~2名

座位が保持できれば、90㎝タイプ(kb-90)
座位が厳しいなら、160㎝タイプ(kb-160)

階段の広さといった構造的な問題でキャリダンなど安全性の高い避難器具を利用できない場合、コスト的に安く抑えたい方は1~2名で担ぐことができる「ベルカ」を選ぶと良いと思います。

対象者の方が大柄だと介助者の負担が大きいですが、現実的なところでは個人が準備できる価格帯はベルカだと思います。

取扱店:株式会社あんしん壱番 楽天市場店
ベルカ 介護担架160cmタイプ KB-160

着脱式 車いす緊急避難装置「JINRIKI」(平地移動)

着脱式の車いすの緊急避難装置「JINRIKIR」と「JINRIKIR QUICK」
車いすの通常の「押す」という機能に「引く+前輪を浮かす」という機能をプラス。

車いすは、身体障がい者だけでなく、避難に時間のかかる高齢者や子ども、妊婦さんにも適しています。

通常の車いすの場合
・地震後の瓦や崩れた塀など散乱した道を避難所に向かって押して歩く。
・豪雨災害後の砂利道や泥だらけの道を車いすを押して移動する。

どちらも大変な労力です。

これが人力車のように車いすを操作できたら「てこの原理」で介助する側の負担が大きく軽減されます。

導入している自治体
2012年の三重県鳥羽市合同避難訓練では車いすが滑りやすい雨のなかでも、健康な人と同じスピードで避難ができたことから、2013年度より、三重県では災害時要援護者対策用資機材として導入。

対応する車いす
フレームサイズが17~25Φの一般的な車いすに対応。

耐久性・安全性について
車いすなどの福祉・介護用具の耐久テストを実施し評価をしている「日本福祉用具評価センター/JASPEC」で耐久試験を実施。

一般的に使われている車いすを使用。
体重100kgと想定、ダミーを載せる。
JIS規定の20万回の走行耐久試験を想定。

結果
車いす、JINRIKIR QUICKいづれも異常なし。
防災安全協会の防災製品等推奨品証も取得。

避難がスムーズ
大規模な地震だけでなく、西日本豪雨のように大雨でも避難が必要になるほどの災害に発展することが増えています。
障がい者、高齢者、子ども、妊婦さんも車いすを利用することでスムーズに短時間で避難ができれば家族も本人も安心ですね。

リヤカーとしての活用
車いすを「人力車」のように動かせるので避難生活のなかでは単に「人を乗せる物」から「役立つアイテム」に進化します。

100kgの荷重に耐えられるので、給水車から水、支援物資の搬入でも活躍できる。

避難所生活も円滑に
いろいろと気を使ってしまう避難所生活、車いす利用者や家族にとっても、車いすが周囲の役に立つことは良い関係性、環境づくりにもプラスに作用します。

介護保険制度「福祉用具の貸与」の対象

65歳以上で要介護なら介護保険を適用して購入も可能。
※40歳以上で特定疾患による要支援の指定を受けていれば適用も。

補装具・日常生活用具
身体障がい者向けの補装具・日常生活用具の支給制度ではまだ適用されていません。
しかし、自治体の身体障がい者更生相談所で特例補装具として認められると購入費が支給されます。

電動車いすユーザーの避難
電動車いすはバッテリーが切れてしまう便利な乗り物から重機に変わります。

避難先も比較的にバッテリー充電に理解がある福祉避難所などに限られます。

身体的に可能であれば、大人2~3人で対応可能な手動の車いすに「JINRIKIR」「JINRIKIR QUICK」を装着されると介助する側も負担が減ります。

取扱店:あんしんの殿堂 防災館 楽天支店
通常タイプ
けん引式 車いす補助装置 JINRIKI

簡単装着タイプ
JINRIKI QUICK(クイック)

車いすユーザーが忘れてはいけないこと

自助・共助・公助という考え方を知っていますか?

「自助」とは、自分の命は自分で守りましょう。
「共助」とは、隣近所など地域コミュニティで災害発生時に力をあわせましょう。
「公助」とは、個人や地域レベルでは対応できないことは国や自治体など公的機関が解決しましょう。

この自助・共助・公助は江戸時代からある考え方ですが、近年、災害時において重視されるようになりました。

最初に「自助」そして共助・公助とあるように災害時は「自分の命は自分で守る」ことが大前提です。

だからこそ、車いすユーザ―に限らず避難時にサポートを必要とするなら「介助していただく、救助していただく」という自分の立場を十分理解しなければならないと思います。

私が介助する側だったとして
「助けてもらって当然だ!」「老人なんだから敬われて当然!」そんな態度や考え方の人を自分たちも被災者で2次災害が起きるかも知れない現場で積極的に助けたいと本気で思えません。

どんな方法でも、災害時の介助していただけることに感謝しなければいけないと思います。

だから、介助していただく方の負担が少しでも軽減できるように避難器具や防災グッズなどは自分で購入して置いています。

避難勧告は廃止、高齢者等避難(警戒レベル3)で避難をしましょう!

避難指示ガイド(2021年改訂版)

2021年(令和3年)5月20日からこれまで発表していた「避難勧告」を廃止しました。

これにより、車椅子ユーザーや高齢者など避難に時間が必要な方は警戒レベル3「高齢者等避難」が発表された時点、健常者の方は警戒レベル4「避難指示」の時点で安全な場所への避難するようにしてください。

整理とまとめ

車椅子ユーザーの避難時の課題は4つあります。

  • 停電時エレベーターが動かないときの階段避難
  • 段差の多い場所での移動
  • 電動車いすの重さ
  • その場に1人だったとき

私の住んでいるマンションの管理組合ではキャリダンの導入のため予算編成しているところです。

また、指定避難所や福祉避難所までのルートに坂道が多いので、介助していただく方の負担を少しでも減らせるように着脱式のけん引装置「JINRIKI」を個人的に購入しようと考えています。

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